エッチのあれこれ⑯ 客人神への饗応

 性の風習「初夜権」を調べているうちに、「ヘロドトスの記述によると、バビロニアの女性は、結婚前にただ一人の旅人(異教徒)に身を任せなければならなかった(旅人を神の仮の姿とする見方は、世界各地に多い)」(小学館・日本大百科全書)という記述を目にし、ふと十数年前、手元に送られてきた性体験記を思い出した。このヘロドトスの記述にすごく似た体験が綴られていたからだ。

 今から半世紀ほど前、まだ若い会社員だった筆者が出張で秋田に向かい、夜遅く到着。旅館探しに困っていると、和服姿の中年女性が近づいてきて、「もし、良かったら、近所の旅館に部屋を取ってあるので使いませんか」と声をかけてくれる。

 筆者が喜んでいると、「ただし、その代わりに、うちの娘を抱いてください」と依頼される。驚いた筆者が理由を訊ねると、「結婚の決まった女性が、満月の夜に、遠方から来た旅人と一夜を共にすれば、幸せになれるという言い伝えがあるから」とのこと。空を見上げれば、確かに満月。こうして筆者は思わぬ据え膳にあずかったというものだった。

 真実の話かどうかの確認のため、筆者に電話をし、細かく質問をしたが、その受け答えにはまったくよどみはなかった。

 民俗学でいう客人神への饗応だと思われるが、近年までこんな風習が残っていたとは興味深い。

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