西鶴の『好色一代男』は、主人公の世之介がスケベ仲間7人とともに大きな船に乗り込み、「女護ヶ島」へ向かって船出するというシーンで終わる。
この女護ヶ島とは、ギリシャ神話のアマゾネス同様、女性だけしか住んでいないという、男性にとって天国みたいな島のこと。
こんな島が本当にあるのだろうか。もしあれば行ってみたいものだと男性なら誰しも考えるはず。
その思いは、西鶴が活躍していた江戸中期にもあったのか、『広益俗説弁』(井沢蟠竜著)には、伊豆七党の南端、八丈島を女護ヶ島と称したとある。
ところが、それが単なる俗説ではない証拠を、今も島で唄われている『八丈小唄』の歌詞のなかに見ることができるのだそうだ。
《南風だよ 皆出ておじゃれ 迎え草履の紅鼻緒 》
「八丈島の南にある青ヶ島は、その昔、男島で、夏の季節風に乗って、若衆たちが女島の八丈島へ渡ってくる。八丈の娘たちはそれぞれ印をつけた紅鼻緒の草履を波打ち際に並べ、それを履いた若衆と一夜を共にし、そうして生まれた子が男であれば青ヶ島へ送り返したのだという。日本の古代の通い婚が伝説化したのだろう」(小学館・完訳日本の古典50『好色一代男』解説より抜粋)
うーん、紅鼻緒の草履が波打ち際に並んでいる光景を想像するだけで、男のロマンとやらを感じるのでしょうかね。


PAGE TOP