大正15年に発行された『世界浴場史(キャバネ著・国際文献刊行会)という奇書訳本がある。
著者キャバネ氏の紹介がなされていないのでどこの国の人かはわからないが、その当時、外国人が日本の風呂事情をどう見ていたかが面白いので、一部をご紹介してみよう。
「ロシア人が氷(凍)った風呂の好事家であり、反対に日本人は甚だ熱い風呂の信者である。彼らは四十度、あるいはそれ以上の風呂を怖れぬ」
ロシア人の凍った風呂というのは、サウナに入ったあと、体を冷ますために雪の上に寝転ぶのを指しているようだが、日本人が「熱い風呂信者」だと思っているところがミソ。
「日本では、どんな貧乏な家にも大抵は浴室が備えられている」
当時は、銭湯が多く、内風呂はそんなに普及していなかったはずだが。
「不思議なことには、最も原則的な清潔のあらゆる定規に反して、日本人は足から洗い始めて上に上がり、一番最後に頭を洗う」
おいおい、洗う順序は人それぞれだと思うのですが。
「女たちは糠を入れた布の小袋でこする。こうして元々少し黄色い肌を白く見せようと努力する」
「しかし、何は置いても、ただ一つの国民のみが清潔である。それは日本国民だ」
けなしたり、誉めたり、忙しい人だなぁ。
