花嫁は花婿のものか、それとも神様のものか?
「古代インドでは、シバ神の表象である石製、金属製、象牙製の男根によって結婚前の女性の破瓜がなされ、また古代ローマの花嫁は、同じ意味で、男根神像の膝の上に座らなければならなかった」(小学館・日本大百科全書)
初夜権は主にその土地の領主、聖職者、長老などが行使するが、この場合は呪術的な儀式として聖職者が行っていたと思われる。花嫁の破瓜の血によるケガレ(不浄)から花婿を守るという意味と、「処女を神に捧げる」という意味からである。
ただ、その根底には、「女性は、住んでいる土地の神様の所有物」という論理が働いているようで、同じケースはわが国でも見られる。その一例が、新潟県栃尾で毎年3月に行われる奇祭「ほだれ祭り」だ。この祭りでは、長さ2、3メートルの木製男根(ほだれ大神)の胴体の上に、その年に結婚して栃尾にやってきた初嫁たちを乗せて神輿にするというユニークな神事が行われる。つまり、よその土地からやって来た女性が、この(神と体を交えるという)儀式を経ることで、地区の一員、氏子として認めてもらえるという通過儀礼ではないだろうか。
もちろん、五穀豊穣、子孫繁栄祈願の祭りなのだが、見方を変えると、神による初夜権が変化したもののようにも…。