時代劇を見ていると、奥方たちが夫の死後、仏門に入るというシーンがやたらと登場する。
尼になり、夫の菩提を弔うなんて妻の鑑だな、なんて思ったら間違い。それ以外にも理由があったようだ。日本の初期の仏教には「変成男子(へんじょうなんし)」という女性蔑視的な思想、女性は死ぬとき女性のままでは成仏しづらいので、いったん男性に生まれ変わらなければならないというとんでもない教えがあったからである。
そこで、男性に生まれ変わるために手っ取り早いのが、出家して尼さんになること。男性僧と同じ修行精進をこなすことで、「変成男子」を成し遂げようとしたのだそう。
とはいえ、僧や尼僧が増えてくると、寺院経営も大変。中世になると、寺院や尼寺では大勢の僧や尼僧を養うために酒造りを商売にしていた。特に、奈良の寺々は酒造で名高く、その酒粕で野菜を漬けたものが奈良漬けの発祥なんだそう。
そのほか、尼寺では現在の五色豆のような菓子や干瓜、扇などを製造して販売していたというから、時代劇に出てくるような読経三昧の生活を送っていたわけではなかったようだ。
こうしてみると、尼さんたちも大変だったんですね。男断ちだってしなきゃならないんだし…。
【参考文献】『中世に生きる女たち』(脇田晴子著)