『陽物比べ』という絵巻物がある。そう、陽物とは男根のこと。自分の胴体ほどありそうな巨大男根を台の上にドンと載せ、物差しで計測させている烏帽子をかぶった男、その横で自分の男根の小ささに頭を抱えている男。そして少しでも大きく勃起させようと、腰を突き出して力んでいるヒゲ坊主…等々、思わず笑ってしまう光景が繰り広げられている。
『鳥獣戯画』で知られる鳥羽僧正が描いたとする説もあるが、その真偽はともかく、男は自分の男根の大きさを誇示したがるものだということを、絵師は風刺したかったのだろう。
まあ、これは絵巻物に描かれた光景だが、なんと、この陽物比べが実際に行われたという記録を、天明期を代表する文人であり、狂歌師の大田南畝(なんぽ、蜀山人)が残している。
対戦したのは、当時の著名な国学者である清水浜臣と小山田与清(松の屋・ともきよ)の2人。南畝を含めた文人仲間と連れだって料理屋に入ると、余興で陽物比べを始める。
芸者に三味線を弾かせながら、相撲の勝負よろしく行司役が軍配代わりの扇を構える。その扇がサッと上がった瞬間、浜臣が太く、逞しい男根を勢いよく突き出す。与清のものも大きかったのだが、勢いなく、ヘナヘナと突き出してしまったので、軍配は浜臣に上がったのだそう。
いつの時代でも、男ってアホだけど、愛すべき生き物だよね。