結婚するまで体の関係がない男女は、今の時代どれくらい存在するのだろう。それでも、二人の「初夜」は存在したはずだ。
ほんの数十年前までは、結婚式と披露宴が終わると、新郎新婦はその足で新婚旅行に出かけたり、式を挙げたホテルで一晩だけ過ごして翌朝新婚旅行へなんてケースがほとんどだった。それでも、誰にも「初夜の床入り」を邪魔されることはなかった。
だが、その「初夜」の儀式を、わざと邪魔するというとんでもない奇習が、近年まで全国各地にあったのをご存じだろうか。
福島県相馬地方では、「婚礼の晩は障子に一つでも多く穴が開いた方がめでたい」という気風があって、大人だけでなく子供たちも一緒になって新郎新婦が同衾している部屋の障子に指を開け、中を覗いたという。この障子に穴を開ける気風は福島だけでなく、広島県などでも行われていたそうだ。しかも、大人たちが子供たちをあおってやらせていたというから、驚くほかはない。
岩手の釜石では、床杯がすすんだ頃を見計らって新郎の友人たちが新郎新婦の部屋に押し込み、真っ裸にし、布団ごと縄でグルグル巻きにしたという。床杯というのは、今では行う人もいないと思うが、新婚夫婦が初夜に寝所で盃を交わす儀式のこと。
この、新郎新婦を裸に剥いて帯や紐で縛って同衾させるという習俗は山形県や山陰地方でも、近年まで見かけられたそうだ。
これだけ周りで騒がれても、無事に初夜の契りが済ませられた新郎新婦って、すごいよね。
【参考資料】『性風土記』(藤林貞雄著・岩崎美術社刊)
