隣家で火事が起きたとき、屋根の上で赤腰巻を振ると類焼に免れるというマジナイを、ご存じですか?
江戸時代の有名な振袖火事(明暦、大火)や大阪天満の大塩平八郎の乱のときにも、各民家の屋根の上に多くの腰巻がひるがえっていたそうだし、関東大震災時にも、同じように腹巻が打ち振られていたという。
これほど火事には呪術効果が信じられていた赤腰巻だが、所変われば品変わる、こんな使い方もあったようだ。
その一つが雨乞い。能登半島の福浦漁港では、遊女たちが遊びに来た漁師に居続けてくれるように、地蔵に赤腰巻を巻いて風雨を祈願した。海が荒れれば漁に出られないから、居続けてくれると考えたからである。
その反対に風雨や嵐を鎮める呪具としても活躍していたらしく、土佐清水の漁村では、夫が出漁する前日、奥さんたちはパンティーではなく、わざわざ腰巻をつけて龍神祠に参詣し、海が荒れないよう祈願していたそうだ。
また、病気回復にも効果があると信じられていたようで、関西から中国にかけての地域では、風邪を引いたときは赤腰巻を頭からかぶって寝ると治るという俗信があったといわれている。
恐るべし、赤腰巻の呪力。一家に一枚は常備しておいた方がいいのかも…。