「一夫多妻」ならぬ、「一妻多夫」という、淡泊な亭主に不満を抱いている奥さんたちが聞いたら、よだれを垂らしそうな婚姻形態が行われていた地域や部族がある。南インド・ニルギル高地に住むトダ族、ヒマラヤ地方のチベット人、スリランカのカンディ・シンハラ族、ポリネシアのマーケサス島民だ。
国や地域それぞれの事情で、婚姻理論は形成されてゆく。一夫一婦婚が正しい婚姻形態と信じられている現代では、異端とも思える、この「一妻多夫婚」も、実は理由があってのこと。
簡単に言うと、(語弊はあるけれど)貧困を乗り切るための生活の知恵なのである。
一人の妻を一人の夫で養うより、複数の夫で養う方が負担が少なくなるという合理的な考え方だ。そして、そうしなければ生きていけないほど、土地が狭かったり、収穫量が少なかったりという現実もあるのである。
また、言葉は同じ「一妻多夫婚」でも、国によって形態は違い、チベットでは兄弟によるものが主。中には、父が後妻を娶ったときや、息子が嫁を迎えたときなどは、「父子一妻婚」というケースもあるようだ。
生きることがまず最優先の「一妻多夫婚」。「一夫一婦婚」が成立できる国に生まれたこと自体、私たちは幸せに思わねばならないのかも…ですね。
【参考文献】『性と結婚の民俗学』(和田正平著)


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